2日前の日曜日。
親父に力仕事を頼まれたので手伝いに行った。
手伝いの内容は簡単に言うと粗大ごみの回収だ。
親父の知り合いの父が亡くなったそうで、その人が住んでいた家が物であふれかえっていたので片づけるのに人手が必要だったのだろう。
しかも築70年くらいの家だそうで、階段は急だわ、タンスだのなんだのが大正時代から持ってきたもんかって思うほど古くて大きいものばかりだった。
くそ思いタンスやらソファを外に運んでは、そのままうまい具合にトラックに載せたり、あまりにも大きいものはハンマーで破壊して小さくしたりしていた。
昼の13時から手伝い始めて結局家に帰ってきたのは23時半。ほぼ1日中手伝って常に汗だくになりながら手伝ってかなりヘトヘトだった。
でもゴミを車で運ぶ途中で親父が月見バーガーを買ってくれた。うまかった。
なんだかんだいい運動になるし、頼んできた人には感謝されるし悪い気持ちにはならなかった。
問題は他にも手伝いの人たちが来てからだった。
一人は20歳の大学生。もう一人は28歳の社会人。どちらも男。
初めのうちは皆作業をしているのでそれに関わる会話しかしていなかった。そっち持って、とかこう回転させて降ろそうとかね。
愛想もよさそうだし気さくな人で印象は良かった。
片づけが落ち着いて一旦休憩しようとなった。
それまではそれなりに生き生きと作業していた僕だったが、休憩中の会話の方向は僕の苦手な方向に進み、雲行きが怪しくなってきた。
28歳の男は子供が3人いるらしく、ただ最近昇進してとても忙しいそうで子供たちの相手ができないと嘆いていた。周りは「ヨ!課長!贅沢な悩みやな」と言った感じでまあとにかく盛り上がっていた。
そんな矢先、28歳の男が僕にひとこと。
「しょぺ君は子供はいるの?」
この質問だけで内心ちょっと身構えてしまったのだが、いかにも気さくなふりで対応した。
「いや、いないっすよ!」
28歳男の質問攻めは止まらない。
「あ~結婚はしてんの?」
してるよね?って感じでもはや確認に近い。僕は段々気まずい気持ちになってきた。
「あーいやしてないですねー」
28歳男もなんとなく気まずそうだ。そんな空気を読み取った僕はもっと気まずい。耐えられなくなってきた。
少しの間があり誰とも目を合わせられない時間が続いた。早く別の話題へ移ってくれと願った。
でも不幸なことに28歳男はまだ僕への興味を失ってはいなかった。
「仕事はどこでしてんの?」
もちろん職種だとか有名な会社であるなら会社名を聞きたくてしてきた質問だろう。
話の流れ的にも間違いなくそうだった。
でも僕は豆腐メンタル、仕事が続かなさ過ぎて正規雇用を諦めて短期派遣で食いつないでいる男。
対して、28歳男は高校を卒業してすぐに働き始め今では管理職、子供は3人。
ありのままを言うとドン引きされる。そう思った。
とにかく返事をしないとと思いなんとか言葉を発した。
「名古屋で働いてます」
もちろん相手の目など見られたもんじゃない。
28歳男は少し困惑したような顔で言った。
「それ場所やん(笑) んで、何してんの?」
目の前が真っ暗になるかと思った。
もう諦めてちょっとだけ本当のことを言った。
「まあ~フラフラしてます(笑)」
「そうかー」
その場からいなくなりたかった。
馬鹿にされているようでたまらなかった。
この惨めさはなんだ。
1つしか歳が変わらない人とここまで自分が違うこと。
28歳男みたいな高校を卒業してすぐ働き始めた人たちってのは20代の内に結婚して、子供もいてバリバリ働いている。
皆それが当たり前だと認識している。
そしてそんな人たちからしたらこんな自分のようなやつは同じ人間と思えないくらい理解に苦しむんだろう。
生き生きとしながらやっていた休日の力仕事は一瞬にして気の重い逃げ出してしまいくらい嫌な仕事になってしまった。